夜の歌をききながら
ぼんやり部屋を眺めてた
夜の歌を眺めながら
うつろに声をきいていた
重ねた名前はバランス悪くて
崩れて 倒れて どうにもならない
それでも上に載せていくから
いつかそれが山になる
夜の手にひかれて
透明な道をたどってた
夜の手をたどるなんて
そんな資格はないのに
ああ 目が悪くなったみたい
叫んで 狂って どうにもならない
もう何もかもがわからなくて
ああ 月がみっつ見える
2001 高校1年の秋 稚菜
金と銀がかすむ水に
包まれたなら もう帰れない
優しさはエサ
甘さは毒
心地よさはかりそめ
思い出してはいけない
だまされてはいけない
記憶はまるごと
回廊のワナ
出口の無いワナ
金と銀がかくれた海に
誘われたなら もう逃げられない
見上げてしまえば もう終わり
優しい月はすべてを吸い込み
ふくらませていく
波のワナ
止まらないワナ
2001 高校1年の秋 稚菜
赤い月が手をたたく
丸いお腹をゆすらせて
さぁ 始まるよ
夜のパーティー
悪夢のサーカスが
笑顔をかきむしっても
青空をけなしても
綺麗な月が 思い出が
悪夢に変わってしまうなら
僕はいっそ
赤い手をとるよ
忘れたくて
忘れたくて
忘れたくないから
さぁ 始めようか
お客さんを待たせちゃいけない
キャンドルも灯ったことだし
夜のダンス
楽しくて
おもしろくて
少し悲しい
悪夢のサーカスが
2001 高校1年の秋 稚菜
踊る世界で
まわっていたけど
少し酔ったようで
立ち止まると落ちてしまうのに
気付くと吸い込まれてしまうのに
足をゆるめたら
何もかもが白くなった
止まった世界に
沈んでいたら
熱が出たようで
まわりはぐるぐる動き出して
派手な歌がまわり出して
ほら、また踊るんだ
2001 高1の秋 稚菜
秋がこんなに怖いなんて
深い色
深い空気
ずっと前から知ってるのに
いつも知らない風を呑む
秋がこんなに怖いなんて
色あせる木々
死んだ風
ずっと前から気付いてたのに
何故か失うことを思う
秋がこんなに怖いなんて
光の場所
輝いた日々
ずっと前に閉じたのに
またあのドアを開けてしまう
風がこんなに怖いなんて
光がこんなに怖いなんて
秋がこんなに怖いなんて
2001 高校1年の秋 稚菜
今を生きてる私には
秋の風はすこし寒い
記憶ばかりを連れてきて
一息に行ってしまうから
みんなの声も 光の場所も
あの時 あの事
ぜんぶ過ぎて
もう見てはいけない
帰れない
でも なぜだか
抜け出したくなくて
昔を生きてる私には
セピアの風はとてもつらい
さびしさばかりを連れてきて
ひとりの今に引き戻すから
2001 高校1年の秋 稚菜
いつでも雪はちらちらと
空の中を遊んでる
私たちには届かずに
天でふらふら笑ってる
こんなに離れたこの町では
あなたは滅多にあらわれない
なのにさっさと溶けていき
冷たさだけをのこしてく
いつでも雪は望まれずに
急に空からおりてくる
それはまるで気まぐれでも
きっと何かがあるんだろう
2001 中学3年の冬 稚菜
ゆらゆら
はがれおちそうな
イチョウの葉っぱ
ほそいほそい小枝に
必至でしがみついているけど
それでも木枯らしはふきつづける
気まぐれな風笛を
さみしげにならしながら
2000 中学3年の秋 稚菜
ほら 今日もまた
寄せて 逃げて 消える
止まらない波たちは
いつだって色んな想いを
運んでくるんだ
だからジレンマは消えない
やわらかな光のように
どこまでも広がって
こんなに離れた私にも
ぼんやりと届く
昔のこころをぬりかえて
くりかえし
くりかえし
・・・もう来ないで
願いだけを
よんでるのに
ほら いつものように
近づいて 伏せて 消える
尽きないまなざしは
いつだって誰かの瞳を
探しているんだ
恐くて恐くて
飲み込まれて
ばらばらになりそうでも
どうにかして
のりこえたい
このジレンマは消せない
2000 中学3年の秋
心だけでもとべるなら
それでもいいと思うけど
このまま風をすべれたら
どんなにいい気分だろう
目をつむってみる
心だけがぬけだす
力をぬいて風をうけて
それでも目をあけてみると
やっぱりとべなくて
とびたつのはいつも簡単
飛び続けるのはいつも駄目
それはいつものこと
2000 中学3年の夏 稚菜
ああ どうしよう
ガラスの中の熱帯魚
外はみんなゆれて
思ってる半分も見えてない
泡ばかりが吐きだされ
生ぬるい水をゆらりと泳ぐ
はぁ・・・これからどうすればいいんだろう
時々思い出すのは
海ではなく波
小さな目に海は大きすぎたんだ
きらきらな水面をすかして
真っ白なカモメを見てた
なんとなく あこがれて
あの波が鼓動なら安心なのに
仲間もきっと消えないだろうに
ひきとめたいのは当たり前なはず
でも消えたのは僕で
今はひとり
ガラスの水槽をゆらりゆらり・・・
生ぬるく心を落として・・・
2000 中学3年の夏 稚菜
真っ白な雲になって
目を閉じて
風に運ばれて
そんなふうに海を渡ってく
船を見下ろし手をふった
誰も僕を見てないけれど
それだけでいいんだ
泡はすぐに消える
僕もいつかはそんなふうに
真っ白な弧になって
力をぬいて
歌をうたいながら
そんなふうに空をのぼってく
港を離れて旅をした
仲間はみんな遠いけれど
いつまでもよりそっていられない
波はすぐに消える
僕ももうすぐそんなふうに
真っ白な線になって
力尽きて
夢の中泳ぐ
そんなふうなカモメになってく
2000 中学3年の夏 稚菜
銀の糸 からまって
動けない
夜の天井 かぶさって
見つけられない
ガラスの風 つつまれて
耐えられない
手がとどかないのは
わたしが小さい所為?
世界が大きい所為?
見上げた月は意地悪で
たまに姿を見せるのに
あえない
ふれられない
1999 中学2年の秋 稚菜
手の中に、月のかけら。
太陽は、もう、無い。
太陽は光を放てずにいて、
月は光を映せずにいて、
だから光は、もう、無い。
なのにかけらは傷をつくり、
手の中は古い光だらけ。
雲の中の月は孤独で・・・
だから、泣いて、砕けたの。
1999 中学2年の秋 稚菜